SCBS島風 安全管理マニュアル

第1章 事故を未然に防ぐための安全対策

1 事前準備段階における安全対策

(1)下見(使用する海岸・護岸・海面)について

事前の下見は、当日対応するスタッフが行い、次の内容を確認する。必要であれば活動場所・危険箇所の写真、ビデオ撮影も行う。また地元の漁師、海上保安庁などからも情報を得る。

1 安全な場所の選定

活動場所が、目的や活動内容に合致しているか、予定している参加者(人数・年齢・体力・運動能力など)に合うものかどうか。潮汐による海岸の広さや岩礁の有無、潮の流れを見極めて、場所の選定をする。

2 危険箇所の把握

参加者の目線を意識して、複数で危険箇所のチェックを行う。危険箇所に加えて、当日の活動範囲や監視体制、荒天時の緊急避難場所や避難ルートもあわせてチェックしておく。
また、地元の漁師・関係機関にも危険箇所を聞いておく。

3 病院・消防署・海上保安庁などの把握

万が一に備え、緊急連絡先を作成するため、活動場所周辺の病院や消防署・海上保安庁などの連絡先を把握しておく。同時に、連絡方法、運搬手段、活動場所からの所要時間をチェックしておく。

(2)下見を踏まえての計画の見直し

下見を行うことで、企画段階では気付かなかった危険箇所や、必要な安全対策(指導体制・監視体制・組織・用具・装備など)が出てくる場合は計画を見直す。

(3)指導体制・組織について

通常時の安全管理体制として、緊急連絡先一覧と同様の組織を置くが、セーリングカッターを動かすためにも5名以上が原則である。ただし、参加者の人数、年齢、参加する各団体、活動内容に応じて、より具体的かつ実質的な組織の構築が必要である。また、通常の活動ではセーリングカッター・ヨットなど個別に定めた指導員を配置し、実施にあたってはスタッフの役割分担を明確にするとともに、必要に応じて警察や消防、海上保安庁などとも連携を図る。

協力団体と日頃から親交を深め、情報共有およびイベント時の協力体制を整えておく。

(4)参加者および保護者・引率者に対する説明

イベント開催時は主催者が事前に参加者や保護者、引率者と面識をもつことは大変重要であり、特に参加者が子供の場合には保護者や引率者に対しても事前に説明を行う。

① 参加者への説明(安全教育として)

ア 事前の準備物・服装について
事業者または主催者は海洋性レクリエーション体験の予約が入った時点で参加者に事前に準備物(水筒・帽子・踵が固定できるサンダル・サングラスなど)および服装(ラッシュガード・帽子・濡れても動きやすい服装など活動に適した服装)をできるだけ細かく知らせるとともに、当日の天候で荒天等が予想される場合はあらかじめ通知しておく。
イ ルール・マナーの遵守
法律や集団の規範・約束事、そして道具の扱いに至るまで、安全を確保し快適に活動するためのルールやマナーなどについても、参加者が遵守するよう徹底する。
ウ 安全に対する意識づけ
活動の多くは非日常的な自然環境の中で行われるものである。従って、日常的に予想される危険とはかなり異なる。指導員、スタッフが作成した危険箇所や注意事項の一覧をもとに、参加者の安全に対する意識が高まるように指導する。
エ 自己責任の意識づけ
「自分の身は自分で守る」という意識をもつことは、子どもであっても非常に大切である。参加者のレベルや発育発展段階にあわせて意識を促す。
オ 活動中の安全に対する意識づけ
活動中は安全に対する意識が薄れることもあるため、特に子どもに対しては常にセーフティートークを交えながら注意喚起することが大事である。また、大人はある程度の経験があると自信過剰により冷静な判断が出来ないときもある。

② 保護者・引率者への説明

ア 安全に対する意識付け
保護者や引率者に活動場所や当日のルート、活動内容を知らせる際に、各家庭や学校、施設においても子どもに対して、危険箇所・注意事項などを意識して安全に十分気をつけて参加するよう、言い聞かせることを依頼する。
イ 保護者・引率者の責任
保護者または引率者には、活動の趣旨、内容などを理解し同意した上で、子どもを参加させる義務があることを説明する。なお、保護者は子どもの参加に際して、子どもの持病やアレルギーなど、配慮すべき情報や参加当日の健康状態などを報告する必要があることを説明する。

(5) 参加者の情報及び特徴の把握

1  参加者の情報の把握

参加申込書、同意書、健康調査書などの参加者の情報を、事前に把握しておくことが必要である。特に、対象が子どもの場合、持病やアレルギー、常用している薬などについても情報を把握しておく。また、同意書、健康調査書は一定期間保存すること。(約半年)

2 参加者の特徴の把握

次の項目については、事前準備の段階で把握できれば、参加を認めないなどの対応によって危険を回避できる場合がある。しかし、事前説明の段階では申告漏れなどにより把握できない部分もあるので、活動中も把握に心がける。
ア 参加者の体力・能力
自然体験活動では、実際に身体を動かす活動が含まれるため、参加者の基礎的な体力や運動能力、活動技術レベルについて確認が必要な場合がある。体力、運動能力に関しては参加者のレベルに応じた計画を立て、実施場面では弱者に合わせて行動することが大原則である。また、参加者の中に特に配慮が必要な人がいる場合、十分な対応が出来る準備(スタッフ・機材・装備)をしておく。
イ 参加者の行動・態度
集団活動を進める場合には、ルールやマナーを守る事が重要である。ルールや公平さを無視した行動や、自分勝手などの逸脱行為は、事故やトラブルに発展する恐れがあることを認識しておく。
ウ 参加者の意識・感情
参加者の不安や悩み、緊張などの意識や感情が解けない場合や、仲間との関わりを避けるような様子が見受けられるときなどは、細心の注意を払う。

(6)スタッフに対する指導

① 役割分担とコミュニケーションについて

組織、チームとして十分に機能するためにまず心がけなくてはならない点である。ミーティングなどを通して、役割分担を明確にし、コミュニケーションが十分とれるようにしておく。

② 危険に対する意識づけ

海洋体験活動中に想定される危険には、次のようなものがある。
・ 熱中症や日射病が原因(高温度、直射日光など)
・ 動植物が原因(ハチ・オコゼ・クラゲ・サメ・エイなど)
・ 気象条件が原因(天気の急変、落雷、強風、突風、地震など)
・ 水が及ぼす影響が原因(水温、水深、潮流、波浪、低体温など)
・ 活動技術が原因(溺れる、転覆、漂流など)
・ 活動機材が原因(ブームパンチ、ロープ巻きつき、デッキでの転倒など)
・ 活動場所が原因(岩礁への衝突、座礁、他の船との衝突など)
・ 軽率な行動が原因(転倒、擦り傷、打撲、刺し傷など)
・ 疲労や心的要因が原因(判断ミス、パニック、過度の興奮、低体温、疲労凍死など)
・ 健康管理と衛生管理が原因(発熱、下痢、食中毒、嘔吐など)
この他にも、想定できるあらゆる危険についてスタッフの中で話し合い、一覧にする必要がある。

③ 個人情報の取り扱いに関する注意

個人情報の取り扱いに関して、紛失・漏えいが発生しないよう管理責任者を定め、これらのリスクに対する安全対策を行う。また、活動を通して得た個人名や写真等の個人情報については、本人の同意がない限り第三者に提供する事がないように十分に留意する。

④ 危険箇所の確認

下見で撮影した写真やビデオ、海図を利用するなどして、スタッフ全員が危険箇所などを把握する。

⑤ 事故対処トレーニングの実施

緊急事態が起きた場合、冷静に対応できるよう、スタッフ全員がマニュアルについて理解しておく。万が一の場合に備えて、事故を想定したトレーニングをしておく。

⑥ 救命救急法・AED操作方法

いざというときのために、指導者やスタッフは消防署や日本赤十字社などで実施している止血法、心肺蘇生法、AEDの操作方法などの救急処置トレーニングを必ず毎年1回は受講する。

⑦ シーズン前のスキルアップ研修などの実施

指導者、スタッフは繁忙期前には必ず自己のスキルアップを目的にセルフレスキュー、グループレスキュー、などの研修を含めた事故に備えた救助訓練を行う。

(7)用具・装備・備品について

事業者、主催者側が用意する船艇・用具・装備・その他備品については、対象者に適しているか、不具合がないかを点検しておく。緊急用の用具・装備・救急箱も用意しておく。また、使用方法についても熟知しておく。

(8)緊急時の対応について

緊急時の内部連絡、家庭への連絡、警察、消防、海上保安庁、病院の連絡先、診療時間などの確認をし、緊急時のマニュアル、緊急連絡先一覧表などを作成し連絡体制を整えておく。また、必要な備品を用意しておく。

(9)保険の加入について

障害保険、賠償責任保険に加入しておく。また、保険の種類、加盟店、保険期間、免責事項を確認しておく。

(10)スタッフの危険予知トレーニングの実施

スタッフ全員が、現地の状況(海面、天候、潮汐など)や今までの経験、事例をもとに危険を予知する訓練を行う。
1 危険の発見(どんな危険がひそんでいるか)
2 特に危険なポイントの発見(その日の状況にあわせた危険のポイント)
3 具体的な対策の検討(私ならこうする)
4 行動目標の決定(私たちはこうする)
という4つの段階を経て、危険予知及び危険回避の能力を高める。海洋体験中にみられる危険の多くは、日常的に予想される危険とはかなり異なることをスタッフ全員が認識しトレーニングを実施する。

2 実施段階における安全対策

(1)気象状況の把握と事業の取り扱いの判断

海洋体験の実施日には、最新の気象予報について、PCやスマートフォンなどを用いて十分に情報を収集する。また、活動日以前の気象状況についての情報も収集し、観天望気や当日の現場の状況、参加者の情報を統合して、海洋体験
の実施、継続が妥当かどうかについて、勇気をもって判断する。

(2)危険箇所の再確認

危険箇所については、下見および企画の段階で確認しているが、下見のときの情報以上に当日のコースや様子を海図を使うなどして再度確認すること。たとえば、潮の潮汐により岩礁が現れる箇所や波高により今まで安全と考えていた箇所の様子も変わっていることもあるので必ずスタッフ全員で確認をする。また、必要な場合は危険箇所を表示するなどして、注意喚起を行う。
天候などに応じて活動の中止や変更はあり得るが、活動内容を変更する場合も予定していない危険を伴う活動を行うことはしない。

(3)船艇機材・備品・用具・装備の再確認

通常使用する船艇機材・備品・装備品だけではなく、緊急用の用具・装備があるかどうか、実際に使用が可能かどうかの確認も行う。地上との連絡手段である無線機やスマートフォンなどの通信機器の動作確認、電池残量なども確認
しておく。

(4)スタッフの役割分担・緊急時の対応についての再確認

緊急時の安全マニュアル、連絡体制を全員が理解し、万が一の時に速やかにかつ確実に対応できるようにしておくとともに、安全マニュアルや緊急連絡先、救急箱、AEDなどの設置場所を周知しておく。また、活動地周辺の海上保安庁・消防・警察・医療機関などとも連携がとれるようにしておく。

(5)参加者の状況把握

① 人数の確認
活動すべての基本になることなので、スタッフが責任をもって行うこと。
② 健康状態
活動に入る前に、参加者の健康状態を健康調査書・口頭などで確認する。参加者には、いかなる体調変化もすぐに申し出るように伝えるとともに、指導者は参加者が体調不良などを訴えた場合は、その後の活動への無理な参加は控えさせるようにし、子どもの場合は保護者、引率者に連絡をする。また、このような場合、参加者は少々無理をしてでも、継続して参加したいと意思表示することがあるが、指導者またはスタッフが判断しかねるときは医療機関の判
断により、活動への参加の可否を決めるようにする。
③ 心の状態
様々な関わり合いや活動の中で、心の状態が不安定になっている参加者がいないかどうか注意し、活動を無理強いしないように配慮する。
④ 服装など
海洋体験活動では、それぞれの活動に適した服装や装備が必要である。指導者は、事故を未然に防ぐためにも、屋外での帽子の着用や、クラゲ対策での長袖長ズボンの着用やサングラスの推奨など海洋体験に適した服装などについて
指導する。
⑤ 感染症対策について
感染予防対策を十分に行うこと。参加者の当日の健康調査書のチェックや、こまめな手指の消毒・機材の消毒を行い、参加者の体調の変化に気を配ること。

第2章 活動内容別の危険な状況と注意点

1 海洋体験活動中の危険な状況と注意点

(1)海における危険な状況

○突然深みにはまる、リップカレントなどにより沖に流されることがある
○水中では陸上にいるときよりも急速に体温が奪われる。
○突然の大きな波が押し寄せることがあるので注意する。
○オコゼやクラゲなど毒をもつ動植物に刺されるなど。
○急な天候の悪化による高波や突風、濃霧、落雷など。
○潮流や風に体力が追いつかず漂流してしまう。
○転覆「沈」や落水などによるパニック状態。
○セーリングカッターへの乗り降りの際の転倒。
〇段差でのつまずきやスロープでの滑り。
〇桟橋や岸壁と艇で手足を挟む。
〇セーリングカッター上でバランスを崩して転倒や落水。
〇櫂備え・櫂納め時に周囲の人に櫂があたる。
〇漕艇時に櫂が海中に引き込まれ、身体が後方に倒れる。
○他の船艇との衝突など。
○参加者同士のトラブル。
○船酔いなどによる急な体調の変化。
○艤装品の不備による操船不能状態。
○ブームパンチなどの怪我や操船ミスによる事故。
○水深が浅い場所での座礁。
など。上記に記載している危険項目以外にも多数の危険が存在する。活動前にその日の全ての状況を把握し、スタッフ全員で、参加者の安全管理ができるか否か、その日の活動に支障がないか判断する。

(2)海洋体験における注意点

①天候・海の状況を把握する
活動直前に、天候、風向き、風速、波高、干満時間、潮流、海面状況、水温、その他の船舶、状況などについて把握する。その上でその日の活動が妥当かどうかを判断し、コースの選定をする。
②必要な用具・装備を揃える。
万が一に備えて救命具・救命用具・緊急対策マニュアル・緊急連絡先一覧表などを配備、携行するとともに連絡手段として無線機や携帯電話を携行する。
③監視体制を整える
参加人数や参加者の年齢など参加者情報をもとに監視場所の選定や、監視艇の手配をし、監視スタッフは参加者から片時も目を離さないこと。

(3)セーリングカッター・ヨット体験における注意点

活動前には、参加者の服装(帽子、長袖長ズボン、マリンシューズなど)のチェックをし、装備品の点検および一度艤装してから船体や艤装品に損傷がないか確認する。陸上であっても水辺に近い場所では必ず救命胴衣を着用させ、初心者が操船する場合は必要であればヘルメットを着用させるなどの安全対策をとること。セーリングカッター・ヨット体験に関しては他のマリンスポーツ体験に比べ難易度が高いため、参加者に事前学習を依頼しておく。

(4)救助艇・監視艇操船における注意点

出船前に救助艇、監視艇の安全点検(油量・船艇に損傷がないか・エンジンに不具合がないかなど)を行い、装備、携行品(曳航用ロープ・救命具・通信機器・救急箱・緊急対策マニュアル・緊急連絡先一覧など)の確認を行い活動している参加者全員が見わたせる場所、すぐに駆けつけられる距離で監視を行う。
また、活動範囲内の水深や岩礁地帯、フェリーなど他の船舶の航路など、危険箇所を事前に調査しておくこと。航行時は引き波に注意し、参加者に危険箇所などの注意喚起を行うなどをし、常に全体の状況を把握しておくこと。

(5)イベント開催時における注意点

SCBC島風のメンバー以外のスタッフや団体と合同で行う事業では、日頃の活動海面等の状況が分からない場合が多い。潮流や危険箇所、避難場所などの情報を共有して事故防止に努めなければならない。
また、帆船など大型の船舶を使用するイベントでは水深の把握や係留場所の確保、関係各所との入念な打ち合わせや申請を行う必要がある。また事故が起きた時の責任の所在を明確にしておく必要がある。
参加者の募集の際は注意事項を明確に記載し、必要事項を必ず事前に記入してもらい保険に加入すること。

(6)水辺の活動における注意点

参加者に「自分の身は自分で守る」という意味で水に入るとき、海洋体験中は必ずライフジャケットを着用させる。監視は「片時も参加者から目を離さない」こと。特に子どもはときに予期せぬ行動をするので、指導者、スタッフは子ども
が予期せぬ行動をする前提で対応すること。

第3章 万が一事故などが発生した場合の対応

1 事故などに対応するために必要なもの

(1)緊急対策マニュアル

①緊急時の体制について
責任者、指導、監視、救護、渉外などの役割を決めて、緊急時に対応できる体制を作る。ただし、参加者の人数や、スタッフの人数、活動内容に応じて、より具体的、かつ実質的な組織の構築が必要。
②組織図について
組織図、緊急連絡先一覧表を作成し、救助艇およびスタッフが乗るセーリングカッターなどで携行するとともに艇庫や役員宅でもマニュアルと一緒に保管しておく。
③緊急時の対応について
事故が発生した場合、初動が事故者を救済出来るか否かを左右する。初動の際に救助者が最も気をつけなければならないのは、二次災害を防ぐ意味でも、「冷静になる」「自分自身の安全管理をする」「事故者以外の人たちの安全管理をする」の3点である。上記の点を踏まえて、迅速に適切な対応をとることが大切である。

(2)緊急連絡先一覧

①緊急連絡先一覧表について
緊急連絡先一覧表は組織図とともに救助艇およびスタッフが乗るセーリングカッターなどで携行するとともに艇庫や役員宅でも保管しておく。
参加者が学校、その他団体であれば各団体の引率者、保護者などとも連絡できるように必要であれば個別に作成すること。また、それぞれの連絡先に誰が連絡するかということも明確にしておく。これを参考に実際の活動内容に応じた緊急連絡網を作成し、安全管理に努める。

(3)緊急時の用具・装備

①救命具、救助用具(活動内容、活動場所に応じた用具)、救急箱
レシュキューロープ、レスキューチューブなどを常備して普段から不測の事態に備えておくとともに用具の使用方法、救助訓練を行いいざというときに迅速に対応できるようにしておくこと。
②通信用機器(トランシーバー、無線、携帯電話など)
③毛布、アルミ保温シートなど
季節に関係なく低体温症や急な天候の悪化に備えておくこと。

2 事故の一報

事故の一報は、事業主催者や保護者、引率者にできるだけ速く、正確に伝えることが重要である。
以下のように、事故発生の日時、場所、人数、氏名、年齢、所属、処置の内容、怪我の程度などについて報告する。
● 事故の概要を、現地から事業主催者へ電話で連絡する。
● 事業主催者または現地本部は、保護者、引率者に報告する。
● 事業主催者または現場責任者は関係機関に速やかに報告する。
※ 負傷者および保護者への対応の心得
安全対策を十分にとっていても、事故や怪我が発生するときがある。その場合、負傷者やその保護者には誠意をもった対応が不可欠である。海洋体験などの自然体験活動では、参加者の自宅と離れている場合が多いので、保護者の不安を考えて、できるだけ速く正確な情報を伝えるとともに、場合によっては活動場所や医療機関に同行することも必要である。

3 情報収集・発信について

事故などが起こったときには、下記の点について留意し、情報収集・発信を行う。

(1)情報の収集

事故発生の日時、場所、人数、氏名、性別、年齢、所属、処置の内容、怪我の程度などを正確に把握する。

(2)情報の一元化

現地での情報の集約・発信については、担当者を決め、一元化を図る。

(3)情報の発信

情報を発信する場合、プライバシーに配慮し、誤解を招かないよう、正確な表現に努める。

(4)情報の記録

収集した情報は、時間の経過に沿って正確に記録すること。記録した情報は今後の安全対策に活用することもでき、必要であれば関係各所に提示すること。

第4章 安全対策を万全にするために

1緊急時の安全管理体制

①組織図について
現地責任者と事故対策本部の連携を速やかに行うために管理体制を明確にした組織図を作成し、安全管理マニュアルとともに、艇庫および各役員宅で保管または携行する。各現場スタッフは事故の一報があったときに備えて、自分の担当、役割を理解したうえで、日頃から意識しておくように心がけること。
②事故対策本部について
イベント開催時には本部テントを設置し、海洋体験活動において万が一事故が起きた場合は本部テントを事故対策本部とする。その他通常の活動時は最寄りの艇庫を事故対策本部とする。事故対策本部には下記のものを保管しておくこと。
ア 安全管理マニュアル
イ 緊急対策マニュアル
・緊急時安全管理体制(組織図)
・緊急連絡先一覧表
ウ 救急箱
エ 救命具 タオル・毛布など。AEDや担架は近くの設置場所の把握。

2安全管理チェックリスト

(1)シーズン前における安全対策

下見(現地調査)について
□ 安全な活動範囲を選定したか?
□ 危険な場所などのチェックをしたか?
□ 病院・消防署・海上保安庁などは把握しているか?
□ 漁具、その他海面に障害物はないか?
指導体制・組織について
□ 指導者・スタッフの人数は十分か?
□ 専門家の意見は聞いたか?
□ 活動場所周辺の海上保安庁・消防・医療機関との連絡体制はとれているか?
□ 活動に必要な知識、技術、経験をもった指導者、スタッフがいるか?
□ 活動内容に応じた資格をもった指導者・スタッフがいるか?
緊急時の対応について
□ 緊急対策マニュアルは作成したか?
□ 緊急連絡先一覧は作成したか?
緊急時の用具・装備について
□ 救命具・救助用具(海洋体験において必要なもの)は用意したか?
□ 通信用機器(無線・トランシーバー・携帯電話など)は用意したか?
□ 救急箱(応急処置用の薬など)は用意したか?
□船艇機材・救助艇兼監視艇について
□ 使用する船艇機材・救助艇の点検はしたか?
□ 船外機のメンテナンス・動作確認はしたか?
□ 使用する船艇は活動内容に適しているか?
体験活動全般について
□ 日程、時間、体験内容は余裕をもって無理なく計画できているか?
□ 対象者は日程、プログラムに無理のない設定になっているか?
□ 活動に必要な用具・装備品の点検、動作確認はしたか?
□ 保険に加入したか?

(2)事前準備段階における安全対策

指導者・スタッフに対して
□ 役割分担は明確にできているか?
□ 参加者の数に応じたスタッフの数を確保しているか?
□ 危険に対する学習はできているか?
□ スタッフ全員による危険箇所の確認はしたか?
□ 事故対処トレーニングの実施はしたか?
□ 救急法・AED操作・救急トレーニングの受講はしたか?
参加者に対する説明について
□ 体験にするにあたり適切な服装、持ち物を案内したか?
□ ルール・マナーの遵守について説明したか?
□ 指導者・スタッフの指示に従うことや許可を得てから行動しなければならないことを説明したか?
□ 危険に対する説明はしたか?
□ 自己責任に対する説明はしたか?
□ 保険に関する免責事項について説明したか?
保護者・引率者への説明
□ 危険に対する説明はしたか?
□ 保護者の責任について説明したか?
□ 保険に関する説明はしたか?
参加者の情報の把握について
□ 緊急時の連絡先は把握できているか?
□ 持病・アレルギーなどについては把握できているか?
参加者の特徴の把握について
□ 体力・運動能力について把握しているか?
□ 行動・体力について把握しているか?
□ 意識・感情について把握しているか?
危険予知訓練について
□ 日頃から危険予知についてスタッフが意識しているか?
□ スタッフ全員で危険予知訓練を実施したか?

(3)実施段階における安全対策

実施直前の確認について
□ 気象状況について把握しているか?
□ 活動内容や開始時間の再確認は行ったか?
□ 活動場所や危険箇所の再確認は行ったか?
□ 活動に必要な用具・装備の再点検はしたか?
緊急時の対応について
□ 緊急時の体制、役割は再確認したか?
□ 緊急連絡先一覧は再確認したか?
□ 緊急マニュアルは現場に常備できているか?
緊急時の用具・装備について
□ 救命具・救命用具は確認したか?
□ 通信用機器は動作確認したか?
参加者の把握について
□ 体験開始前に人数の確認を行ったか?
□ 休憩後に人数の再確認を行ったか?
□ 到着時に人数の確認を行ったか?
□ 健康状態はチェックしたか?
□ 服装などに対して指導したか?
□ 出船前にパドルの使い方など、十分な説明ができているか?それを参加者が理解しているか?
指導者・スタッフについて
□ 安全についてチェックしたか?
□ 健康についてチェックしたか?
□ モチベーションの維持、安全意識の維持はできているか?
□ 参加者とのコミュニケーションは十分とれているか?
□ 他のスタッフとの人間関係・信頼関係は築けているか?
□ 船舶免許・資格などの携行はできているか?
□ 船舶免許・資格などの有効期限は過ぎていないか?
□ 同業者・関係団体との連携はとれているか?
□ 総合的に体験活動の内容、安全管理に対し十分に理解しているか?

必要に応じて以上のようなチェックリストを作成し安全対策を万全にすること。

3 保険について

万が一の事態に備え、スポーツ安全保険(賠償責任保険)に加入しておくこと。
イベント開催時はイベント保険に参加者全員加入すること。また、免責事項などは予め役員は把握しておくこと。

4 救急や安全に関する講習会

海洋体験活動に携わるスタッフは必要に応じて講習や研修を受講することが望ましい。
参加者の安全を守るため、海洋体験スタッフは安全管理に必要な知識、技術、経験を養うことが必要不可欠である。必要な知識、技術を得るために積極的に研修や講習に参加させること。また日々の活動においても各自が自己研鑽し、知識や技術を向上させるために努力し、情報の共有をすること。
「推奨する講習や資格」
・救急救命法
・AED操作方法
・指導員に関する研修会
・セーリングカッターに関する講習会
・ヨットに関する講習会
・気象、海象に関する講習会
・舟艇の修理に関する講習会
・その他、活動に必要な講習会

5 海洋体験活動の中止基準

安全を最優先するために、会員は天候や参加者の体調、その他の理由により、海洋体験活動の中止を「勇気をもって決断する」必要がある。中止するかどうかの判断を迷うときは、会長もしくは役員の指示を仰ぐ。迷う時は思い切って海洋体験の中止を決断することが望ましい。

海洋体験での中止や参加の可否の判断基準

3 何らかの警報が発令されたとき。
4 海上の波の高さが1メートル以上のとき。
5 海上の風速が6メートル以上のとき。
6 雨天・濃霧により視界が確保できないとき。
7 参加者が感染症を疑わせる体調不良を申し出たとき。
8 参加者が飲酒や薬物を服用した状態。
9 てんかん、心臓疾患など体験中に持病が出るおそれがあるとき。
10 参加者の服装、態度により危険と判断したとき。
11 怪我や病気により体験に支障が生じると判断したとき。
12 活動海面に障害になりうる浮遊物が多い、他船の航行が多いなど、安全な活動海面が確保できないとき。
13 他の参加者への暴力行為、暴言、セクハラ行為をする参加者がいるとき。
14 スタッフの指示に従わない参加者がいるとき。
15 スタッフの怪我や病気により必要な人員が確保できないとき。
16 開催県および自治体が感染症による警戒レベルを引き上げた時。
17感染症の感染リスクが高く、安全を確保できないと判断した時。
18気圧が急激に下がる傾向や、大気の状態が不安定で今後の予報が頻繁に変わる状況で今後の大気の予見が難しいとき。
上記、またはその他の理由で、役員またはスタッフが、危険と判断した場合や海洋体験活動の進行が困難となるおそれがある場合は事故防止のため、海洋体験活動の中止および参加を拒否すること。

以上の内容を理解し、「SCBC島風」の会員は日頃より安全管理に対する意識を高め、自己の技術、知識の向上に努め、より安全な海洋性レクリエーションを提供できるよう努力する。

危機管理能力を高め、安全意識のレベルを高めることは、「負傷者、関係者の生命を守ること。」「負傷者と関係者の信頼関係を維持し、日常の組織、運営を守ること。」「主催者、関係者、関係団体に対する信用や信頼を守ること。」「自身の生活や、家族を守ること。」に繋がる。

また、全国の事故の事例をもとに原因究明、対策を協議し、再発防止に向けた取り組みを行うよう努力し、必要であればマニュアルの見直しを行う事。

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